やれ缶詰だの一人暮らしの身には身に余る程の野菜や果物だの役所から貰った地元のカレンダーなど、いろいろと。
今回はそんな「定番アイテム」と一緒に”父のセーター”を持たせようと必死にプレゼンテーションしてきた。
まだろくに着てなかったのよ、とかこれは若い頃のだからアンタにもサイズ合うでしょ(父は自分より体が一回り大きいがっしりした体型だった)、とかこれから風邪が流行る季節じゃない?とかあの手この手を使いつつ何枚も何枚も取り出してきては、最後には「ほらこうやって入れれば持って帰れるよね?」と私のバッグに詰め込む実力行使もしつつ一向に諦めようとしない。
根負けして、一枚だけサイズは最も合うけれど、自分の年齢では少し老け過ぎなそして少し安っぽいテクスチャーのセーターを貰って帰ることにした。
・・・・
家に帰って一段落してからそのセーターを気紛れに羽織ってみた。
ああ考えてみれば父は30代の頃からこういう服ばかりだったなとか、そうした服のほとんどは見立ては母任せだったのだろうな、とか考えつつ、
自分がまだ小学生にあがるかあがらないかの年代の頃、父の服を着たり無理矢理着せられたりして、そしてなんだか誇らし気な感じをほのかに感じていたりした、そんな時の事を念い出していた。
キャメル色のセーターの首元からはその頃の「父」の匂いがほんの少しだけ香ってきたような気がする。もちろんもうそんな匂いがするはずもないのだけれど。(とうの昔にそんな残り香は消え去っているはずである)
父が鬼籍に入ってから3年が過ぎた。・・・・そちらは寒くないの?寒かったら中からあっためるってことで一杯どう?母さんは待たずにたった一人で逝ってしまったことを今でも嘆いてるよ?全くせっかちなんだからと空に向かってつぶやきつつ...などと件のセーターに身を包みながら宙に仄かに言葉を吐いてみているが勿論答えは無く、ただただほのかな暖かさだけが皮膚に伝わってくるのみであった。